アフター万博の関西を読む──不動産エージェントが見つめる都市の未来と市場のゆくえ

 2025年の大阪・関西万博が幕を閉じてから一年。2026年の今、私たち不動産エージェントは、アフター万博の関西がどのように変化し、どこへ向かおうとしているのかを、日々の相談や現場の空気から肌で感じている。万博は半年間のイベントで終わったわけではない。むしろ、都市の課題と可能性を可視化し、これからの関西の方向性を示す“起点”になったと言える。

 まず、大阪の変化は明確だ。夢洲は万博閉幕後も国際会議場や物流拠点の整備が続き、企業誘致が徐々に進んでいる。まだ地価が急騰する段階ではないが、問い合わせの質が変わった。「投資として買いたい」ではなく、「事業として使いたい」「研究拠点を置きたい」という声が増えている。これは、“期待先行の投機”から“実需ベースの投資”へと市場が移行しつつあるサインだ。

 うめきた2期も同様で、研究開発施設やスタートアップ支援拠点が稼働し始め、オフィス需要は底堅い。大阪の不動産市場は、商業地・オフィス・物流施設を中心に安定した動きを見せており、2026年以降も緩やかな上昇が続くと見られる。エージェントとして感じるのは、「大阪は“住む街”から“働く街・創る街”へと役割が広がっている」ということだ。

 神戸は万博の直接的な恩恵は限定的だったが、三宮再整備が街の価値を確実に押し上げている。歩行者空間の拡大や交通結節点の再編により、回遊性が高まり、居住ニーズが回復している。実際、神戸市中央区の中古マンション市場では、2024年以降、問い合わせ数が増加し、2026年も堅調だ。神戸は「派手さ」よりも「暮らしの質」を求める層に支持されており、生活都市としての安定感が市場を支えている。

 京都は、万博期間中に観光需要が再び高まり、2026年もその勢いが続いている。しかし、祇園や嵐山ではオーバーツーリズムが再燃し、生活環境との摩擦が深刻化している。観光地周辺の不動産は依然として高値だが、居住エリアでは「静かな環境を守りたい」という住民の声が強く、規制強化の議論も進む。京都の不動産市場は、文化資産としての価値が高まる一方で、“住む街”としてのバランス調整が必要な局面に入っている。

 観光と地域経済の関係も、アフター万博で大きく変わった。万博をきっかけに関西への注目度が高まり、2026年は国際会議や大型イベントの誘致が増加。神戸・京都・大阪で開催されるマラソンや文化イベントは、宿泊・飲食・交通など幅広い分野にわたり100億円規模の経済波及効果を生み出している。エージェントとして現場に立つと、イベント開催前後で問い合わせが増えることを実感する。イベントは単なる集客装置ではなく、街の魅力を“体験”として伝える装置なのだ。

 しかし、観光の光と影は依然として存在する。大阪では特区民泊の急増に伴う騒音・ゴミ問題が深刻化し、2025年10月に新規受付が停止された。無人運営の限界が露呈し、住民との共存が課題となっている。京都では観光客の増加が生活環境に影響を与え、地域住民との摩擦が続く。観光は地域経済を支える一方で、生活の質との調和が不可欠であることを改めて示している。

 さらに、海外投資家による不動産購入の規制強化も議論が進む。2022年施行の「重要土地等調査法」に続き、2025年以降は都市部の価格高騰や空き家問題への対応として、透明性確保を目的とした追加的な制度設計が検討されている。これは外国資本を排除するためではなく、土地利用の透明性と地域の持続性を守るための議論である。

 こうした動きを踏まえると、アフター万博の関西は「成長」と「共生」の両立が求められる時代に入ったと言える。万博は都市の課題を可視化し、解決の方向性を示す契機となった。夢洲の開発は産業拠点としての可能性を広げる一方で、交通・防災・環境負荷などの課題も抱える。観光需要の増加は地域経済を潤すが、生活環境との調和が欠かせない。再開発は都市の魅力を高めるが、地域の文化や暮らしをどう守るかが問われる。

不動産エージェントとして私が強く感じるのは、「不動産は価格ではなく、街の未来を映す鏡だ」ということだ。2026年以降の関西の不動産市場は、

大阪:産業拠点化による緩やかな上昇

神戸:生活都市としての安定した需要

京都:文化資産の価値上昇と居住環境の調整局面
という三都三様の動きを見せるだろう。

万博は終わった。しかし、レガシーはこれから育てていくものだ。行政や企業だけでなく、市民一人ひとりが地域の未来をつくる担い手である。関西の都市が持つ多様性と可能性を活かしながら、より良い暮らしをともに描いていくこと。それこそが、アフター万博が私たちに残した最大のメッセージだと感じている。